あらすじ
夜会の隅で、私は涙を流さなかった。 婚約破棄を告げる声は、王太子の口からではなく、宰相補佐の手元の通達書から、事務的に読み上げられた。 中央で泣くのはお義妹様で、王太子はその涙を拭うのに忙しい。 私は中央に進んで、指輪を、お義妹様の掌に、そっと、置いた。 「お幸せに」とだけ告げて、踵を返した。 その時、夜会の天井が、銀の月光と共に、砕けた。 降り立ったのは、銀色の髪の青年だった。 人ではない、と、見ればすぐに分かった。 「ようやく、迎えに来られた」 低い声には、私が知らないはずの長い時間が、乗っていた。 公爵令嬢ヴィオラ。 七歳で母を亡くし、義妹に手柄を奪われ続けた、十九歳。 胸元のロケットには、母様の形見の、深い青の宝石。 その宝石と、彼の瞳は、同じ色をしていた。 なぜ、彼は、私の好物を知っているのか。 なぜ、宮殿の中庭には、私が七歳の春に一度だけ呟いた、青いリンドウだけが咲いているのか。 私の意識が遠のく前、女性の声が、囁いた。 それは、知っている声だった。 「お母さまは、あなたを千年待った人のもとへ、送りたかったの」 千年。 その言葉だけが、最後まで、私の中に残った。
話数
10
文字数
46,868
初回投稿日
2026-05-03
最終更新
2026-05-03
最新スナップショット
取得日時:2026-05-14 00:00:00
ブクマ
170
総合評価
2,700
評価人数
285
感想数
10
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推移
件数:11
| 取得日時 | 話数 | 最終更新 | ブクマ | 総合評価 | 評価人数 | 感想数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026-05-14 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 170 | 2,700 | 285 | 10 |
| 2026-05-13 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 170 | 2,700 | 285 | 10 |
| 2026-05-12 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 163 | 2,640 | 280 | 10 |
| 2026-05-11 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 162 | 2,550 | 270 | 10 |
| 2026-05-10 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 153 | 2,462 | 261 | 9 |
| 2026-05-09 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 143 | 2,322 | 248 | 9 |
| 2026-05-08 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 133 | 2,160 | 230 | 9 |
| 2026-05-07 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 116 | 1,858 | 199 | 7 |
| 2026-05-06 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 80 | 1,244 | 131 | 4 |
| 2026-05-05 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 43 | 618 | 64 | 3 |
| 2026-05-04 00:00:00 | 10 | 2026-05-03 14:21:40 | 16 | 196 | 20 | 2 |
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