エタ率について|「小説家になろう」連載の継続と脱落をデータで整理
話数と更新状況で判断した「連載が折れやすいゾーン」と「最も安定する話数帯」のレポート
本レポートでは、「小説家になろう」に掲載されている連載作品について、 話数と更新状況のみを使い、 作品が継続するのか、途中で更新が止まるのか、その傾向を整理しました。
評価点やブックマーク数といった人気指標は用いず、 話数という最も基本的な情報だけで、どこまで傾向が見えるのかを確認しています。
集計方法と対象について
今回の集計では、以下の条件でデータを整理しました。
- 対象:現在も掲載されている作品(削除・非表示作品は除外)
- 集計の軸:話数帯(01–04 / 05–09 / 10–19 / 20–29 / 30–49 / 50+)
- 見る指標:更新が止まっているかどうか/完結しているかどうか
更新が止まった作品は、データ上で把握できるのか
まず確認したのは、「更新が止まった作品(いわゆるエタ作品)」を データ上で正確に捉えられるか、という点です。
今回の集計では、更新停止状態は作品の更新状況情報から判別しています。
「エタ」とは何を指しているのか
本記事では、「エタ(更新停止)」を、 次の基準で定義しています。
- 最終更新日から180日以上、更新が行われていない作品
半年以上にわたって更新が止まっている場合、 読者視点・作者視点のいずれから見ても、 「一時的な間隔」ではなく 実質的な更新停止状態と判断しました。
なお、この基準は特定のジャンルや話数に依存せず、 すべての連載作品に対して一律に適用しています。
そのため、本記事で扱う「エタ率」は、 印象や主観ではなく、 更新状況という客観的な情報に基づいたものとなっています。
全体における更新停止率の位置づけ
集計対象となった作品数と更新状況は次の通りです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 対象作品数 | 74,302 |
| 未完結作品数 | 34,734 |
| 更新停止の未完結作品数 | 9,606 |
| 未完結に占める更新停止率 | 27.66% |
| 全体に占める更新停止率 | 12.93% |
未完結作品のうち、およそ4作品に1作品が更新停止状態にあることが分かります。
話数ごとに見る、更新停止の起こりやすさ
次に、未完結作品のみを対象として、 話数帯ごとの更新停止率を整理しました。
| 話数帯 | 更新停止率(未完結内) |
|---|---|
| 01–04話 | 29.59% |
| 05–09話 | 26.33% |
| 10–19話 | 25.68% |
| 20–29話 | 23.33%(最小) |
| 30–49話 | 25.81% |
| 50話以上 | 29.28% |
話数帯ごとの完結率
続いて、話数帯ごとの「完結している割合」を整理しました。
| 話数帯 | 完結率 |
|---|---|
| 01–04話 | 76.24% |
| 05–09話 | 35.14% |
| 10–19話 | 36.37% |
| 20–29話 | 34.95% |
| 30–49話 | 36.59% |
| 50話以上 | 30.21%(最低) |
話数帯ごとに見た「連載の性質」
更新停止率と完結率を合わせて見ると、 話数帯ごとに次のような特徴が整理できます。
| 話数帯 | 特徴(要約) |
|---|---|
| 01–04話 | 実験・完結前提の作品が多い |
| 05–09話 | 連載参入直後で停止が起きやすい |
| 10–19話 | 慣れ始めるが、まだ安定しきらない |
| 20–29話 | 最も安定しやすいゾーン |
| 30–49話 | 中だるみ・停滞のリスクが出やすい |
| 50話以上 | 長期化による負荷で、停止・未完結が増えやすい |
「とりあえず20話まで」という暗黙の共通認識
Web小説の世界では、 なろうに限らず多くの投稿サイトで、 作者・読者・スコッパーのあいだに ある種の共通認識が存在します。
それが、 「まずは20話前後まで続くかどうかを見る」 という考え方です。
作者側にとっては、 「20話程度までは世界観や登場人物を出し切りたい」 「そこまで書いてから評価や反応を見たい」 という一つの目安になります。
読者側・スコッパー側にとっても、 連載初期の数話だけでは判断せず、 20話前後まで続いているかどうかを 作品選別の基準にするケースは少なくありません。
これは公式に定義されたルールではありませんが、 長年の投稿文化の中で形成された、 実務的なラインだと言えます。
興味深いのは、 今回の集計結果でも、 20〜29話の話数帯が最も安定している という傾向が、はっきりと数値として現れている点です。
とりあえず「20話」という目安が、データでも見えてきた
Web小説の界隈では、以前から 「とりあえず20話くらいまでは書いてみる」 という一つの考え方が、作者・読者・スコッパーのあいだにあったように思います。
今回の集計結果を見ると、 その感覚的な目安が、 話数データからも確認できる一例だったと言えそうです。
初期段階にあたる1〜4話ではエタ率が約3割に達しており、 5〜9話、10〜19話と話数が進んでも、 エタ率は25〜26%前後で推移しています。
それに対して、 20〜29話ではエタ率が約23%まで低下しており、 他の話数帯と比べて、 明確に「更新停止に至りにくいゾーン」となっています。
さらに30話以上になると、 エタ率は再び上昇に転じており、 話数を重ねれば重ねるほど安定する、 という単純な構造ではないことも確認できます。
これらの結果から見ると、 「少なくとも30話まで書き、読者の様子を伺う」という心理が働いていそうにも思います。
また、 30話前後で一度区切りをつけられる構成は、 エタ率の上昇が始まる前に物語をまとめられるという点で、 比較的現実的な選択肢だと考えられます。
前回のレポートで示した、1話あたりの平均文字数が約3,000字で考えると、
30話でおよそ10万字弱。
分量としては単行本1巻にやや足りない程度です。
これをリライトして 14万字前後に整えれば、 1巻分としてちょうど収まりの良い規模になりそうです。
もともとはエタ率の実態を確認するために始めた分析でしたが、
結果として、
スコッパーに拾われやすい話数帯や
作家が意識できる一つの目安を、
数字として示すレポートになったのかもしれません。
まとめ
- 180日以上更新がない連載中作品をエタっている状態と判断
- およそ4作品に1作品が更新停止状態にある
- 最も安定するのは20〜29話のゾーン
- 50話以上は継続力がある一方、停止率が再び高くなる
- 「20話まで書いてみよう」という感覚は割と当たっている
本レポートは、作品の良し悪しや執筆スタイルの評価を目的としたものではなく、
取得できるデータから確認できる事実のみを整理・共有することを目的としています。
また、Web小説も歴史は浅くありません。ですので「20話まで書いてみよう」という集合意識がデータに影響を及ぼし、数値として出た可能性も捨てきれません。
