あらすじ
太陽のような人がいた。
月のような人がいた。
そして――
そのどちらにもなれなかった、平凡な少女がいた。
王家に生まれ、特別な力も使命も持たなかったエルシアは、
ただ2人の姉の背中を見つめながら生きていた。
聖女として世界を照らした姉ローザリア。
その影で静かに寄り添い、支え続けた妹リリシアン。
やがて世界は戦争に呑まれ、
姉は奪われ、
王は狂い、
真実は嘘に塗り替えられる。
エルシアは真実を知らない。
けれど、姉妹として見てきた時間だけは、決して疑わなかった。
無垢な少女ではいられなかった。
王家のため、国のため、
彼女は強くならなければならなかった。
これは英雄の物語ではない。
救済の物語でもない。
太陽にも、月にもなれなかった一人の女性が、
それでも誰かのそばで、
消えずに瞬いていた――
その生の記録。