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辺境伯に嫁いで十年。 リーアが担っていたのは花嫁修業ではなく、四カ国との外交だった。夫はそれを「女の文通」と呼び、愛人を屋敷に住まわせた。 白い結婚の十年条項が満了した朝、リーアは引き継ぎ書を机に置いて門を出た。 翌週、隣国からの親書が届く。宛名は辺境伯ではなく「リーア殿」。四カ国が交渉相手として認識していたのは、最初から彼女だけだった。 王都の外務省で新しい仕事を始めたリーアの隣にいるのは、彼女の十年分の書簡を暗記していた若き外交官。「構文が好きだ」と彼は言った。 嘘だと気づいたのは、ずっと後のことだ。