あらすじ
ある秋の日。幼馴染の桂太に頼まれ彼の息子である碧音と過ごすことになった桂。碧音の見せる仕草や表情に、初恋の彼女の面影を見つけて不思議に思う。きっと桂太と彼女(桂花)は双子だから何も不思議ではないと思い始める。そんな時、両手いっぱいのキンモクセイの花を差し出して笑う碧音が桂花の笑顔と重なった。
初めて誰よりも大切だと思った彼女とはずっと会えないまま、不定期に届く言葉のない絵ハガキだけが唯一の繋がりなのだ。送り主不明の絵はがきを彼女からだと信じ、再会の時を待ち望んでいた桂の元に届いた一通の手紙。
突きつけられた事実を認める事ができない。気持ちを落ち着けるために街を歩き回り、いつの間にか通っていた小学校に辿り着く。懐かしい記憶をたどり、キンモクセイを探しながら歩く。そしてそこで思いがけず彼女との…桂花との再会を果たす。
雲の切れ間からそっと月が顔を覗かせた時、桂花の姿が見えた。瞬間的に桂は桂花がすでにこの世界に存在していないことを悟る。
「桂はまだ来なくて良い。私の心にはずっと桂がいるから、さよならは言わない。」
その言葉と頬に暖かな温もりだけを残して彼女は消えてしまった。
いつの間にか降り始めた雨の中、桂は一人立ち尽くす。
自分の気持ちに改めて気付いた桂は、もう二度と失いたくないと願い、どこからか漂うキンモクセイの香りに誘われて辿り着いた先で、扉をそっと開き、ゆっくりとくぐった。
中学卒業を間近に控えた碧音は、部屋の片付けをしようと意気込んでいたものの、思うように作業が進まず途中で飽きてしまった。気分転換にとクローゼットで見つけたフォトアルバムの再生を始めたが、目を疑いたくなる写真を見つけてしまう。
フォトアルバムに残っていた数々の写真が語りだす桂の秘密。そして碧音の秘密が少しづつ明らかになっていく。自分は何のために生まれ、誰かに必要とされているのだろうか。
環境を変えるため街を離れ、信頼できる友と出会い、短すぎる時間を共有した。大切なものを失って初めて気付く思いとは…
街に戻ってきた碧音はしっくりこない街並みを不思議に思いながらも、急にどうしようもなく不安になり、桂に会いたくなった。
そして一番聞きたくて、聞きたくない問いかけをした。
碧音の真実と桂の真実…すべて明らかになった時、桂は幸せな笑顔で光に溶けて消えていった。大きなガラスのキャンバスに最高の思いを残して。