あらすじ
システムエンジニアの高木健太にとって、週末の競馬場は、灰色の日常から逃れるための唯一の「聖域」だった。退屈な仕事、代わり映えのしない毎日。そんな彼が、ある日、パドックで一頭の馬に心を奪われる。
その馬の名は、アオハルカゼ。
血統は地味で、戦績は惨敗続き。誰からも期待されず、ただ静かに、退屈そうな瞳で周回を重ねるだけの、名もなき馬。
「……なんだ、こいつ。俺と同じ目をしている」
理屈では説明できない、運命的な何かを感じた健太は、なけなしの金をその馬の単勝馬券に投じる。
それは、ただのギャンブルではない。自分の空っぽな人生を、その馬に重ね合わせた、魂の叫びだった。
レースが始まり、いつものように最後方から進むアオハルカゼ。
誰もが諦めたその時、健太の隣で、凛とした声が響いた。「――まだよ。この子の本当の脚は、ここからなんだから」。声の主は、同じようにその馬をじっと見つめる、謎の女性「栞」。
なぜ、彼女もこの勝てない馬を応援するのか? アオハルカゼがその瞳の奥に隠した、誰も知らない「本当の力」とは?
一頭の馬と、謎めいた女性との出会いが、色を失っていた男の人生を、今、根底から揺るがし始める――。