あらすじ
王太子から「無能」と断じられ、婚約破棄された公爵令嬢セシリア。
役立たずとして押し込められた先は、誰にも読まれない離宮の文書庫だった。
そこには、途中で途切れた記録、消された名前、残されなかった人々の痕跡があった。
「なかったことにしたくない」
そう思った彼女は、誰にも命じられていない“補遺”を書き始める。
それは事実ではない。証明もできない。ただの推測。
――だがその記録は、やがて外へと流れ出る。
そして誰かに読まれ、使われ、現実を動かし始めた。
救われるはずのなかった人が救われ、
無視されていた場所に支援が届き、
やがて国家の仕組みすら揺らぎ始める。
だが同時に――
「残すこと」は、必ずしも正義ではないと知る。
これは、消されたものを“残す”ことで、
世界の在り方そのものを書き換えていく物語。