あらすじ
風が止む夜、少年はひとりの女性の「声」に出会った。
高校生の燃は、友人たちと訪れた喫茶店〈風見鶏〉で、不思議な空気をまとった女性・かれんと知り合う。
穏やかで、どこか影のあるその笑顔に、燃は理由もわからぬまま惹かれていった。
しかし、彼女が口にしたある名前をきっかけに、空気は静かに変わり始める。
友人・登夢、雷、シャケ――それぞれの過去や家族の事情が絡み合い、かれんを中心に、見えなかった感情の糸が浮かび上がっていく。
好奇心から始まった関わりは、やがて「巻き込まれ体質」と呼ばれる優しさとなり、燃たちは彼女の抱える秘密へと足を踏み入れていく。
夏の和歌山。
そこで明かされたのは、恋と家族の境界に揺れる、切なくも避けられなかった想いだった。
好きだと伝えれば、すべてが壊れてしまう。
それでも燃は、彼女を守るために“言わない選択”をする。
駅のホームで交わされた、短くて温かな別れ――その記憶は、胸に深く残り続けた。
そして夏は終わり、新学期が始まる。
思い出は過去になったはずなのに、物語は思わぬ形で続いていく。
風が止んだその先で、少年が選び取った答えとは――。
これは、恋と呼ぶには少し早く、家族と呼ぶにはまだ遠い、
ひと夏の出会いと選択の物語。