あらすじ
夏の終わり、
進学と家庭の期待に押し潰されそうになっていた高校生・ハヌルは、
ふとした逃避のように、海沿いの田舎町へと足を運ぶ。
そこで出会ったのは、
人が住んでいるとは思えない古い小屋で暮らす、
不思議な少女──アリ。
名前も持たず、過去を語らず、
世界の常識をどこか模倣するように生きる彼女と、
ハヌルはほんの数日を共に過ごす。
ソーダアイスの甘さ。
波打ち際ではしゃぐ足音。
ポラロイドカメラに焼き付けられる、何気ない一瞬。
花火と、ランタンと、静かな夜。
それは確かに、
「生きている」と感じられる時間だった。
けれど、夏は必ず終わる。
真似できないものがあるように、
留まれない場所も、戻れない瞬間もある。
これは、
ひとりの少年が“生きる理由”を見つけ、
そして失うまでの、
短くて、取り返しのつかない夏の記録。
──忘れられないのは、
失ったからではなく、
確かにそこにあったからだ。