あらすじ
王太子の背後で名前を呼ばれたのは平民のカリーナ・グラジオーゾ。
「母上のように大いなる器をもつこのカリーナと新たに婚約を結ぶ。これは既に王妃殿下を通して各地の許可を既に得ている決定事項だ!!」
カリーナは平民でありながらも、類まれな魔力を持ち、あらゆる属性の魔法を扱うことのできる神童として学園で注目を集めた少女だった。
しかしその類稀な才能を持ちながらも、本人は純粋で、素直で、誰にでも優しい――それが彼女に対する世間一般の評価だ。
しかしこの二人は、一つだけとんでもない思い違いの上でこの場に臨んでいる。あの二人には、致命的に合わない所が一つだけあるのだ。そして二人は、その事にまるで気付いていない。でも、もしこのカリーナが本当に王太子妃に私の代わりに成り代わろうと言うのなら、これは避けることの出来ない問題だ。
だから、私はーー
「……へっ?」
まもなく私は衛兵に取り抑えられ、肺から空気が押し出されていく。むせ込みながらも見上げると、カリーナはゾッとした様子で私を見て立ち尽くしていた。
「か、カリーナ! 大丈ーー」
「ーーさ、触らないで!!」
慌てて王太子がカリーナの元へと駆け寄り、彼女の肩を抱き抱えようとした瞬間、血相を変えたカリーナは王太子殿下の腕を振りほどき、嫌悪感を丸出しにしながら彼と距離を取った。
その姿にどよめきが広がり、私を押さえつけていた衛兵までもがポカンとした様子で固まってしまった。
「言え! 貴様、何を吹き込んだ!!」
彼女は露骨な嫌悪感を隠そうともせず、私の囁いた言葉を反復した。
ーーヴァン様は救いようのないマザコン男でヤバいわよ、と。
「さて、殿下。貴方は、ご自身の言葉でこの私を裁けますか?」
これはマザコン王太子と、それを裏で操る王妃にまざぁをするおはなし。