あらすじ
わずか六回。それが、彼が奇跡の力を行使できる限られた回数だった。
黒霧智也。ゲームの上手さしか取り柄のない、ぱっとしない少年。なんの因果か謎の来訪者によって異世界へと連れ去られてしまい、着の身着のまま、特別な力も道具も与えられずに見知らぬ地で一人きり。
努力を諦め、惰性で生きていた罰が下ったのか。母親に反抗的な態度を取った咎めを受けたのか。もう二度と元の場所には帰れないと知り、でも心のどこかで諦観した。
魔法が存在する世界。そんな胸踊るワードにうつつを抜かしていたのだ。
しかし、少年には魔法の才能が欠片もなかった。
キラキラした宝石みたいな魔法使いであふれる景色はとても眩しくて。無色透明な少年の心に嫉妬と羨望の炎を灯した。
――負けたくない。
忘れていた競争心が呼び起こされ、少年は再び腰を上げる。握りっぱなしだったコントローラーを手放し、その手で達成感を得るために。
わずか六回。低級の魔法六発で枯れる程度の、それだけの力。それを行使して、彼はあらゆる困難に立ち向かっていく。