あらすじ
放課後の校庭。誰もいないトラックを、ただ黙々と走り続ける少女がいた。
「自分」を見失い教室の居場所すら揺らぎはじめた彩瀬透葉は、その背中に目を奪われる。清楚で完璧に見える陸上部の笹波陽葵――けれど彼女もまた、“正しい自分”を演じ続けることに疲れていた。
偶然の再会が二人を近づけ、昼休みは誰も来ない美術準備室へ。放課後は校庭や街へ。
言葉にできないものを抱えたまま、それでも笑ったり、寄り道したり、絵を描いたり。少しずつ“選べる自分”を取り戻していく。
やがて二人の場所に、静かに孤立していた一年生の真壁柚羽と、グループから弾かれた朝比奈沙良が加わり、四人の日常が始まる。
だけど、穏やかな時間の端には噂の視線と、ふとした瞬間の違和感が影のように落ちていて――。
「いつか四人で、“アダンの海辺”へ行こう」
まだ名前のつかない感情を胸に、彼女たちは今日も少しだけ遠回りをする。