あらすじ
誰かを守る人生なんて、自分には無関係だと思っていた。 3年前の大震災で家族を失い、一人取り残された佐藤アラタ(32歳)。彼の世界からは色が消え、すべてがモノクロの静止画のように色褪せていた。
ある夜、震災の震源地でもあった「我が家の跡地」で、アラタは不思議な輝きを放つ水晶に触れる。それが、異世界への不条理な招待状だとも知らずに。
意識を失ったアラタが目覚めたのは、「あの世」と「この世」の境界線。そこで出会ったのは、システムエラーの対応に追われる社畜の女神・リプレだった。 「あなたの家族の思い出を、異世界のエネルギーとして買い取らせてもらいます。じゃないと、存在データ消去ですよ?」
強制的に授けられた固有スキル。それは、レベルが上がるたびに、自分を支えていた大切な「家族の記憶」がランダムで抹消され、強力な力に変換されるという呪いのような能力だった。
「父さん、あんたの顔が……思い出せないんだ」
敵を倒し、生き延びるほどに、アラタの中から最愛の人々の声や温もりが消えていく。 色彩に溢れすぎた異世界を舞台に、過去を切り売りして「今」を生き抜く、一人の男の孤独な再起と忘却の旅が始まる。
――すべてを忘れたとき、俺は「俺」のまま、誰かを救うことができるのだろうか。