あらすじ
戦に敗れ、家族も仲間も、故郷さえも奪われた主人公は「勝者が歴史を紡ぐ」理不尽に怒り、死の瞬間に神へ悪態を投げる。だが願いは歪に聞き入れられ、主人公は胸を槍で貫かれたまま蘇るアンデッドとなる。代償は永遠の労働――消されゆく者たちの歴史を書き続けること。
勝者の都にある大年代記院で、主人公は不死の司書グレイヴと羊皮紙の魔女ミラに導かれ、記録の技術を学ぶ。だが、書くほどに自分の記憶が抜け落ち、さらに“空白”そのものを武器にする編集官が敗者の痕跡を削りに来る。
焚書の灰塔で名簿が焼かれる夜、主人公は脚注と縫い目で空白を固定し、敗者年代記の起稿を成し遂げる。そして最後に、誰もいない故郷へ頁だけを帰し、消されるはずだった存在の足跡を土に縫い付ける。