あらすじ
宇宙は、すでに“正しく存在していなかった”。
星は輝いているように見えるだけで、その裏側では空間そのものが軋み、見えない領域が静かに崩壊を始めていた。
それは偶然でも、災害でもない。
――“邪空”。
現実を書き換え、存在そのものを消去する領域侵蝕現象。
そしてその中心にいたのが、銀河犯罪帝国《ジャドー》。
物理法則すら支配する“邪空領域”を展開し、星間秩序を侵食する存在だった。
銀河警察輸送艦《オルフェウス》は、その侵食に飲み込まれた最初の記録となる。
空間は歪み、時間はねじれ、艦は“破壊”ではなく“存在ごと消失”していく。
その戦場に、まだ名も定義されていない“異常”が現れる。
それは一人の人間だった。
千道司凱。
だが彼は、ただの人間ではない。
彼は“解析不能の存在”として銀河警察に記録される。
戦闘でもなく、兵器でもなく、秩序でもない。
ただ一つ確かなのは――彼が現れた瞬間、歪んだ世界がわずかに“正される”という事実だけだった。
アステリオン母艦は彼を観測不能対象として分類し、銀河連邦警察は最終判断を下す。
――銀河探偵アーク。
その名は、存在に与えられた仮の定義であり、宇宙に刻まれた初めての“観測成功”だった。
だがそれは終わりではない。
始まりでもない。
ただ、“次に起きる崩壊を観測するための名前”に過ぎなかった。
アークは呼び出される。
地球へ。
そこは、まだ壊れていないはずの世界。
しかし観測結果は告げていた。
――地球は静かに、すでに歪み始めている。
その事実を確かめるために、アークは移動する。
移動手段は宇宙船ではない。
乗り物でもない。
ギャラクシア。
それは空間を渡る装置ではなく、“世界そのものを接続する現象”。
空間は折れ、星図は裏返り、銀河は一瞬だけ道になる。
そしてその先に、地球が現れる。
何も知らない日常。
誰も異常を感じていない世界。
だがアークだけは理解する。
――ここは静かすぎる。
そして静かすぎる世界ほど、壊れる時は早い。
銀河探偵アーク。
それは、事件を解く存在ではない。
“存在の歪みそのものを観測し、必要なら書き換える者”。
宇宙はまだ終わっていない。
だが、終わりの形はすでに観測されている。