あらすじ
アールブリュットの権利保護を専門とする弁護士、天導院玲皇成は、文化、福祉、芸術をつなぐ理想の実務家として高く評価されていた。
彼は、障害のある作家たちの作品を守り、その価値を社会へ届けることこそ自分の使命だと信じている。
そんな彼が深く関わるのは、莫大な売上を生み出す人気作家の案件だった。
展覧会は成功し、関係者は称賛され、アールブリュットは「純粋な芸術」としてますます神聖視されていく。
しかしその華やかさの裏で、作品ではなく作者の属性によって価値が決まり、本人の意思よりも「保護」や「配慮」が優先される、奇妙で息苦しい仕組みが静かに広がっていた。
やがて天導院は、誰よりも正しい言葉を使いながら、誰よりもおかしなことをしている世界の中心に自分が立っていることに、少しずつ追い詰められていく。
アールブリュットとは何なのか。
それは芸術なのか、ラベルなのか。
保護とは救いなのか、それとも支配なのか。
上品で丁寧で善意に満ちた大人たちの言葉が、いつしか笑えない滑稽さを帯びはじめたとき、ひとつの問いが社会に突きつけられる。
これは本当に包摂なのか。
それとも、ただの差別なのか。