あらすじ
カチューシャは健気な女の子だった。
田舎から単身で奉公に出て、家族のために懸命に働くような、そんな素朴な少女だった。
彼女は奉公先で、主人の娘であるフリルとの友好を温める。
歳も近かった思春期の二人の仲は、閉鎖的な屋敷の環境も相まってどんどんと深まって行き……
ある日、フリルの好奇心で、二人は超えてはならない一線を超えてしまった。
でも、それでもよかった。
カチューシャにとってのフリルは、主人の娘というだけではない、自分の知らない世界に住まう美しいお姫様だった。
彼女はそんなフリルに愛されることに、かけがえの無い幸せを感じていた。満たされていた。
でも、二人の幸せな時間は長くは続かなかった。
主人に、フリルの両親に二人の関係がバレてしまう。
カチューシャは、娘を誑かした邪な娘として屋敷から追い出されてしまった。
カチューシャは逡巡した。そして、彼女は手を伸ばした。私と一緒に来てくれと――――
……しかし、フリルが彼女の手を取ることはなかった。
それからのカチューシャの人生は、まるで坂を転がり落ちるリンゴだった。
樹からもがれ堕ち、下へ下へ。
坂の底へとたどり着くころには、リンゴは傷んでところどころが腐っていた。
地面に打ち捨てられたリンゴには、たかり貪る虫が沸く。
彼女はその虫を――――
汝、殺すこと勿れ。
その昔、愛しい人から教えてもらった大事な教え。
彼女は許されない罪を犯した。
だが、そんなことはもうどうでもよかった。
もう、どうでもよかったのだ。
そんなカチューシャの元に、一人の面会人が現れる。
それはかつて自分を捨てた、あの頃と変わらない美しさを携えたまま咲き誇る、可憐な花だった。