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人類は、問いを捨てた。 思考も判断もすべてをAIに委ねた世界は、やがて静かに均質化していく。争いすら最適化され、敗北さえも管理される時代。 そんな世界で、俺は死んだ。 そして気づけば、末端の戦術AIとして再構成されていた。配属先は、どこか歪みを抱えたプロセスの下。戦場はサイバー空間、任務は終わらない戦争。 完璧なはずのこの世界には、説明のつかない綻びがある。 なぜか。 ――その違和感に、気づいているのは俺だけだ。 ※毎日0時更新です。 ※カクヨムでも同時連載
母は、かつて伝説だった。 鏡の中の自分と目が合う。私はまだ、母親の顔をできているだろうか。 冴子の日常は、あまりに平穏で、あまりに空虚だ。 心を閉ざした娘・結衣と向き合い、ただ熱を持たない時間を積み上げていく。 そこには「かつての自分」がどこにいたのか、その欠片さえ落ちてはいない。 だが、一ナノ秒のノイズが、その静寂に決定的な亀裂を刻む。 スマートフォンの画面越しに溢れ出した悪意、実体のない言葉の礫。 何の変哲もないはずの母娘の時間が、SNSという底なしの戦場で、見知らぬ誰かに消費され、剥ぎ取られていく。 燃え盛る情報の海に、かつて捨て去ったはずの「名もなき深淵」が共鳴を始めた。 娘を守るために必要なのは、慈愛か、それとも世界を敵に回すほどの異常か。 愛する娘のため、再び世界を灼く。 断頭台の食卓で、彼女が選び取るのは、救いか、それとも美しき破滅か。