あらすじ
地下都市で暮らすノアの唯一の家族だった弟・ノエルが死んだ。
ノエルの夢は、海を見ること。
ノアは弟の遺灰を抱え、その夢を叶えるため、地上への脱出を決意する。
ガスマスクを外した先に広がっていたのは、毒に満ちた死の世界ではなく、青い空と風の匂い——そして、太陽みたいに笑う男・ルカとの出会いだった。
「海まで送ってやるよ」
くすんだ青のバイクに二人乗り。初めて浴びる雨、初めて見る夕陽、初めて触れる焚き火の熱。崩れた橋を飛び越え、狼の群れをかわし、毒の残るトンネルを抜けていく。
過酷で、美しい地上の旅路。
一人で進むと決めた暗闇のトンネルの先で、ルカは待っていた。理由を聞いたら「俺も海、見たくなっちゃって」と笑った。
ノアの凍りついた心が、少しずつ溶けていく。同時に、ルカの存在がどうしようもなく大きくなっていることに、ノアはまだ気づかない。
喪失の底で何度立ち止まっても、ルカは待ち、手を引いた。
12日間の旅路の果て、海にたどり着いたとき——ノアの頬を初めて涙が伝う。
これは、喪失と再生のロードムービー。