あらすじ
現代日本にダンジョンが出現してから、人が死ぬのは珍しくなくなった。
探索者たちは潜り、稼ぎ、そしてよく死ぬ。
ギルドは「死亡確認済み」と紙に押して終わらせる。遺族と仲間は泣くだけだ。それが当たり前になった。
神谷 蓮は、その“後始末”をやる日雇いの回収バイトだ。
役目はただの遺体運び。袋に入れてタグを打って上に戻すだけ。ギルド職員ですらない、いちばん下。
──のはずだった。
神谷だけは、見えてしまう。
死んだ探索者の身体から、スキルの核みたいな光がふわりと浮かぶのを。
それに触れると、焼けるような熱と一緒にスキルの「芯」が手の中に入ってくる。
そしてそれを、まだ生きている仲間に“押し渡す”ことができる。
「先輩が庇ってた力、ちゃんと残ってる……私の中に……」
それは、ギルドの常識では絶対にありえないことだった。本来スキルは個人のもの。死ねば消える。それがルール。
死んだ仲間の力を引き継げるなんて、誰も信じないし、信じたくない。
神谷はそれをやる。
ギルドに渡さない。
「ギルド資産」扱いにもしない。
死んだ人間の力を、死んだ人間が守ろうとした相手に返す。
「悪いけど、俺はギルドの味方じゃない。
俺は遺族と現場の味方をやる」
最底辺バイトにすぎないはずの男は、やがてこう呼ばれるようになる。
──“継承士”。
死んだ仲間の力を次へ繋ぐ存在として、
ギルドに目をつけられ、S級探索者に頭を下げられ、遺族に庇われ、国に監視されることになる男の物語。
「死んだら終わり」を許さない。
「使い捨て」で終わらせない。
これは、遺された側のためにスキルを引き継ぐ人間の話。
そして、奪おうとする側と、守ろうとする側が集まっていく話。