あらすじ
夜になると、僕の影が僕を追い越す。
宵浜市に暮らす高校二年生・三倉戒十は、雨の夜、黒猫の姿をした奇妙な影に噛まれる。
翌日から彼の身体は変化し始めた。眩しすぎる光、遠すぎる音、塞がる傷、夜だけ高まる身体能力。そして、本人より先に動き出す自分の影。
戒十を導いたのは、夜の街に潜む離影者たちの共同体《VIOLET DRAGON》。
彼らは人間ではなくなった怪物ではない。肉体から影が剥がれ、自分の中に隠してきた感情と向き合いながら、それでも生活を続ける者たちだった。
一方、戒十の変化に気づいた同級生・水城純もまた、夜の事件へ巻き込まれていく。
戒十は純を遠ざけようとするが、彼の影は、昼の戒十が言えなかった本音を先に告げてしまう。
影を消せば、人間に戻れるのか。
影を支配すれば、自分を保てるのか。
それとも、自分が隠してきた願いも恐怖も、すべて抱えたまま生きるしかないのか。
黒猫、血、ネオン、地下施設、そして夜明け。
これは怪物になった少年が人間へ戻る物語ではない。
自分の影と、一つの人生を分け合う物語。