あらすじ
製造業の現場で堅実に成果を積み重ねてきた佐久間恒一は、数字と事実を武器に、安定した管理職として評価されてきた。
しかし、組織改編により二百名規模の部門を率いるポジションを打診されたことで、自身の限界と向き合うことになる。
論理的で正確な説明はできる。
だが、全体の前で話しても、人の心に何も残らない
――その違和感は、幹部候補研修の評価や、家族との何気ない会話を通じて、次第に輪郭を持ちはじめる。
「人は理屈では動かない」。
分かってはいる。
それでも、“想いを語る”ことができない自分がいる。
変わるべきなのか。変われるのか。
感情を前に出すのが得意ではない自分が、人を率いる立場に立つ意味とは何なのか。
現場で感じた小さな違和感と誇りを頼りに、佐久間は初めて「説明」ではなく、「感じたこと」をそのまま置く決断をする。
大きな成功も、劇的な変化もない。
それでも、不安を抱えたまま一歩踏み出す姿を描いた、静かな成長の物語。