あらすじ
「私との青春を、二億円で買わない?」
「え?嫌だけど……」
帰宅すると、玄関の前にびしょ濡れのクラスメイトが座っていた。
彼女はきっと、急な夕立に降られて雨宿りをしているわけでもない。
何故なら頭上に広がる秋空には一切の雲が無く、薄明の色に染まり始めているのだから。
彼女の名前は、名雲夏菜。友達でも何でもない。教室で『委員長』と呼ばれ、みんなから愛されている女の子。
僅かに残った水滴が光る、空っぽのペットボトルを鞄から覗かせながら、彼女は俺……空見冬斗に提案をする。
「私を拾ってくれたお礼に、好きなことをしてもいいんだよ?」
勝手に拾われに来た名雲は、俺が抱える秘密を知っていた。
とある事情で二億円を手に入れ、無趣味かつ無欲なために金を持て余している退屈な男子であることを。
名雲夏菜は今日も嫌がる俺に絡んで来る。
勝手に隣を歩いて、勝手に家に上がり込んで、勝手に約束を交わして。
金で始まってしまった不純な俺たちの日々は、次第に形を変えていく……のだろうか?
--- 登場人物 ---
◆空見冬斗(そらみ ふゆと)
主人公。高校一年生で、学校近くのアパートに暮らす。
二年前までは両親と三人で暮らしていたが、現在は父母子それぞれが別居状態。
とある理由で二億円の大金を手にするが、無欲なために手つかずで質素な生活を送る。
金によって家族がバラバラになるまでは。年相応の素直な少年だった。
学校では他人に対して一歩引いた距離感を保っていたが、突如やってきた名雲夏菜によって全てが変わっていく。
◆名雲夏菜(なぐも なつな)
空見の同級生であり、クラスメイト。
やや派手な見た目ではあるが、委員長という分かりやすい立ち位置を獲得したため、真面目な印象が上回っている。
それ自体も彼女の計算であり、面倒な人間関係と学校生活を円滑に立ち回るために得た《属性》だった。
気さくで人懐っこさがあるが、無駄な出費を避けるために放課後や休日の人付き合いは悪い。
空見をからかう時は心底楽しんでおり、多大なストレスを抑圧している彼女にとって癒しの時間でもある。
※本作は完結済みです。
2026年2月中に削除予定(カクヨムにバックアップあり)