あらすじ
最初の人アダムは、伴侶ハワーと共に満ち足りた場で生きていた。だが禁じられた木に近づき、自らの誤りと弱さを知った二人は、悔い改めを受け入れられたうえで地上へ降ろされる。
そこは空腹、寒さ、疲労、痛みに満ちた世界だったが、二人は土に触れ、火を扱い、住まいを整え、自らの手で生きる術を覚えていく。
やがて子らが生まれ、アダムは宇宙の理――この世の定めと自由意志がどう両立するか、万物の名が形ではなく存在の本質そのものであること、世界がどうあるかを極限まで見通す叡智――を知る者として、名と秩序を教え、人として生きる形を家族に伝えようとする。
だが、宇宙の理を知っていても、人の弱さと歪みがどこで分かれ、どう育つのかまでは分からない。同じ教えを受けた兄カービルと弟ハービルも、世界の受け取り方を少しずつ違えていく。
決定的な亀裂は、アダムが婚姻の規則を示した時に生まれる。人類の始まりゆえに、同じ双子どうしでは結ばれず、別の組と結ばれねばならないという定めを、カービルは不公平だと拒む。
アダムは供物を天に捧げ、受け入れられた側を正しとする裁きを示すが、受け入れられたのはハービルの供物だった。
認められなかったことを受け入れられないカービルは、自分の誤りを認めれば自分の理屈も世界の見方も崩れると恐れ、弟を殺すことで自分の正しさを守ろうとする。
血が地に落ち、大地は初めて命の重さを知る。これが人類最初の殺しであり、この瞬間から人類は分かれ始める。
宇宙の理を知りながら、息子の断絶を止められなかったアダムは、自らが教えた秩序だけでは人を守れないことを知る。
これは、最初の赦しと最初の殺しを通して、最初の父が人間の限界に触れる創世の物語である。