あらすじ
ある日、胸を高鳴らせるようなバラードを耳にした。
青く連なる山々、澄んだ水、雲海にそびえる高峰、そしてその雲の切れ間に見え隠れする巨大な影。
風が、冒険の始まりを告げるように呼んでいた。
だが、私はこれまで、ゲームであれ、小説であれ、映画であれ、いかなる芸術作品の中にも、「自分が心から旅立ちたいと思える」冒険を体験したことがなかった。
だからこそ、決意したのだ。――自らの手で、この物語を紡ごう、と。
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星の海を渡る時代、人類が新しく見つけた「新世界」は、仮想現実の中にあった。
超・完全潜入型VRMMORPG『ガイア・クロニクル』
空を覆い尽くす巨大な月が世界の理を歪め、忘れ去られた神々の吐息が風となりて大地を巡る。運命の糸は無数に絡み合い、星界の旅人たちの一つ一つの選択が、新たな歴史の川筋を刻んでいく。
「狂想の主」と名乗る青年は、常識という名の初期装備を捨て、世界の法則そのものを捻じ曲げる未知の魔法をその手に掴んだ。星辰せいしんの深淵を覗き込んだ代償か、あるいは祝福か、空間を裂く黒き影が、彼の足跡を静かに追い始める。
目的は最強になることではない。この世界のすべてをその身で味わい、遊び尽くすこと。
たとえシステムが彼を「無謀」と呼び、世界の秩序が彼を「異端」と見なしても。
冷たい月明かりの下、一人と一匹の“地獄の使者”が、城の門を叩く。
――その瞬間、新たな編年史(クロニクル)の歯車が回り始めた。
それは一人の英雄譚ではなく、星界の旅人たちが、そしてこの世界そのものが、自らの意志で未来を紡ぎ出す、壮大なる交響詩の始まりを告げる序曲であった。