あらすじ
大手企業の特別対応係としてクレーム処理を担当する主人公には、相手が嘘をついたときだけ声が微かに歪んで聞こえる能力があった。電話対応から現地対応まで、彼はその力を使いながら、顧客・現場・会社の間で食い違う主張を整理し、最適な落としどころを探っていく。しかし案件を重ねるうちに、嘘は顧客だけでなく、会社側や記録の中にも潜んでいることに気づく。やがて主人公自身の判断が社内で問題視され、彼は「対応する側」から「当事者」へと立場を変えることになる。最後に下されるのは、嘘を暴くことではなく、嘘に依存しない判断。その選択が示すのは、クレーム対応とは謝罪でも正論でもなく、責任を引き受ける仕事だという答えだった。