あらすじ
俺の名前は相馬、相馬 瞳。
妻と子供を連れて年に数度の墓参り。最近は減ってきた蝉の鳴き声を背に、いつものように掃除をし、線香を、供え手を合わせていた。お盆て事もあり、割と多くの人達が同じようにしている。
…さて、帰るかと、支度をしていた時、ふと目に入ってくる。
隅の方墓前に佇む男が1人。この暑さにも関わらず、漆黒のスーツを身に付け白いワイシャツ、黒のネクタイをしている。それでいて汗ひとつかいている様子は見られない。銀色のカフスボタンにネクタイピン、シルバーと黒のロレックス。いずれも一流の身嗜みで下品さもない。
上品な人間だと言う事は身だしなみや所作で大方分かるもの、そして俺は職業が刑事でもあるので人間観察が癖になっている部分もある。
小さな声で墓に向かい、話しているようだ。あまりジロジロ見るのも失礼かと思い、踵を返して帰途につく。
「…おい、相馬。久しぶりだな、俺に挨拶なしとはお前も偉くなったな…」
…!!!?黒スーツの男が身体は墓前に向けたまま、俺に声をかけてくる。それは、嫌な気持ちになるような声でも不審な気持ちになるでもなく、懐かしく温かい声だった…
ま、まさか……?全身の毛が逆立ち、俺は直立不動で男の方を向く。15年、15年ぶりの感覚だった。