あらすじ
芥川城に献上された名物・九十九髪茄子。
その飴色の光は、信長の“冬の美学”と、若き宗春の“春の感性”を同時に揺り動かした。
静けさの底にこそ力が宿る──信長はその光を“測り”、天下を動かす器として見抜く。
宗春は未分化の感性でその気配を受け取り、初めて「静けさ」と言葉にする。
この価値観は利休へ受け継がれ、やがて秀吉の“夏の光”と衝突する。
北野大茶湯を境に、利休の沈黙は深まり、秀吉の光は孤独を増し、二人の価値は静かにすれ違っていく。
三年半の沈黙ののち、利休は大坂城で切腹を命じられ、“美の死”が訪れる。
宗春は、その変質を唯一観測できる存在だった。
信長の冬、秀吉の夏、利休の秋──
そして宗春の胸にだけ残った“深さ”。
価値の誕生と死を描く、静かで深い歴史物語。