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雪国の宿場町シロツメに、初雪が降る朝。宿の娘ユズは、吐いた白い息が“糸”になって空に伸びるのを目にする。糸の先に現れたのは、初雪の日だけ姿を見せる精霊シラ。「今日だけ、言えなかった約束を結べる。夕暮れには糸は消える」と告げられ、ユズの胸に凍っていた言葉が疼き出す。 相手は幼馴染の鍛冶屋の息子レン。春には町を離れる彼へ、ユズはずっと「行かないで」を言えずにいた。軽い挨拶の息は糸にならず途切れるが、ついに漏れた本音「寂しくなる」で、細い糸が伸びる。しかし約束は片方の息だけでは結べない。 夕暮れ迫る橋の上、レンもまた本音の息を吐く。「帰ってくる。必ず」。二人の白い息が絡まり、結び目は小さな鈴となって手のひらに残る。精霊は見えなくなっても、温度だけは消えない。初雪は、言葉になった約束を胸に、ふたりが歩き出す合図だった。
初雪の降るキャンパス。 図書館の窓からぼんやりと外を見ていた文学部一年の綾は、 昨日すれ違っただけの「彼女」のことが頭から離れない。 雪は深くなるばかりで、勉強なんて手につかない。 もう帰ろうと立ち上がったそのとき、 角を曲がった先に、彼女はいた。