あらすじ
ナチス占領下のパリ、1941年6月。
ファッション界の巨星となるクリスチャン・ディオールの末の妹、カトリーヌは、24歳の若き裕福なブルジョワ娘だった。平和に見えるパリで、何不自由なく暮らす彼女の人生は、一人の男との運命の出会いで一変する。バレエダンサーの恋人マルク・ボワイエが、実はレジスタンス組織マッシフ・セントラルの一員だったのだ。
愛する者が死と隣り合わせで戦っていることを知ったカトリーヌは、ブルジョワの安定を捨てる決断をする。ロングスカートに深いスリットを入れ、ニット帽をかぶり、自転車でドイツ軍の秘密情報を運ぶ「目に見えない女性」へ。毎日が命がけ。ゲシュタポの拷問、移送、強制収容所——彼女を待つのは、歴史の最も暗い部分だ。
一方、兄クリスチャンは占領軍の将官たちのドレスを仕立てている。ルシアン・ルロンの下で、彼は失われたフランスの優雅さを守るため、毎日創造に没頭していた。妹が秘密組織に身を投じていることさえ知らぬまま。
占領下のパリで、兄妹は異なる戦いを戦っていた。文化を守る戦い。命を懸けた抵抗の戦い。やがて、その二つの選択は、戦後のファッション史上最大のムーブメント「ニュー・ルック」へと結実し、香水『ミス・ディオール』の名前として永遠に刻まれることになる。
歴史と愛、文化と抵抗が交錯する、知られざき兄妹の物語。