あらすじ
会社を辞めた。金も溶かした。負けたままで終われない。
かつて金融の現場でオプショントレードを担っていた南里は、大きな損失によって仕事も自己像も崩し、生活費を削りながら再起するため、瀬戸内の向島へ移り住む。
海が見えるからではない。
家賃が安い。静か。東京へ戻るまでの仮設拠点。そう割り切って選んだ場所だった。
近所との距離感。修理の手間。小さな商い。橋を渡る感覚。
合理と損切りで生きてきた南里は、勝ち負けでは切れないものに、少しずつ足を取られていく。
勝てば終わりのはずだった。
一億をつくって、自分はまだ壊れていないと証明する。
そのために来た海辺で、削れないものが増えていく。