あらすじ
その教えは、天竺よりもなお遠い西の果てより奈良の都へともたらされた。
奈良・神護景雲三年。疫病が都を覆うなか、尼として悲田院を営む和気広虫のもとに弟・清麻呂が一冊の経典を持ち込んだ。
景教――遥かな西方から唐へと伝わった見知らぬ神の教えだった。
「病める者を救え」
その言葉は広虫の胸を強く打つ。
だが、経典にはもう一つの言葉があった。
「この教えに従わぬ者は、救われない」
その一節を前にしたとき、広虫の脳裏に浮かんだのは悲田院でともに生きる人々の顔だった。
やがて姉弟は、朝廷を揺るがす暗闘へと巻き込まれていく。
その思いを告げるため、二人は帝の御前へと向かった――。