ページ:1(1件表示) / タグ一覧へ
亡くなった人の筆跡を写し取る、筆耕の仕事をしている女。 ある日、病気で妻を亡くした男が、幼い娘へ渡すための手紙を「妻の字で」書いてほしいと依頼してくる。 遺言も、謝罪文も、恋文も受けない。生きている人間の気持ちを、死んだ人間の手に乗せて出す仕事はしない――そう決めていたはずなのに、彼女は断りきれなかった。 なぜなら彼女自身にも、かつて死んだ妹の字を真似て、母を慰めた過去があったからだ。 死者の字をなぞることは、救いなのか、それとも偽りなのか。 手紙を書くたびに少しずつ揺らいでいく境界の先で、彼女が最後に封じたものとは。