あらすじ
「仕事は仕事。感情は無駄。消耗する前に、次行こう」中堅食品商社の激務をサクッと割り切り、ホワイト企業へ転職した高橋遥(29)。「高橋さん」と呼ばれ、効率化されたシステムと穏やかなチームに囲まれる完璧な新生活。かつての泥臭い日々は、もう地図から消したはずだった。……それなのに。歓迎会帰りの夜道、再会したのは元職場で唯一自分を名前で呼んでいた大人しい後輩・佐藤悠真。一ヶ月前より一回りやつれた姿で、彼はまた、聞き慣れた声で私の名前を呼ぶ。「……遥さん、久しぶりです」――は? 何その顔。何その声。完璧に過去を切り捨てたつもりの私の鉄壁が、彼の「遥さん」という三文字だけで揺らぎ始める。これは、サバサバしたアラサー女子が、一人の後輩に「特別」を分からされるまでの、じれじれした日常の物語。