あらすじ
悪食と蔑まれた侯爵令嬢セレス・ヴァールハイトは、誰にも理解されない“味覚”を持っていた。
それは食材の味ではなく、魔力・状態・感情すら解析する異能――【超味覚】。
王国の辺境ダンジョン七層に棲む古竜ヴリトラは、七百年の孤独と飢えに苛まれていた。
やがて帝国が竜を兵器として従え始めたことで、世界は竜を巡る戦争へと傾き始める。
「戦うのではなく、食べさせる」
セレスはただ一つの方法で世界の均衡を変えようとする。
それは竜のための料理を作り、感情と状態を“整える”という前代未聞の交渉手段だった。
やがて彼女の料理は、竜の怒りを鎮め、国家の軍事行動を止め、帝国の陰謀すら揺るがしていく。
だが同時に、竜の魔力と自身の感覚は干渉し合い、彼女の【超味覚】は少しずつ変質していく。
壊れるか、変わるか。
それでも彼女は鍋を振るう。
「これは料理です。そして、交渉です」
――竜と人間の間に立つ、“悪食令嬢”の外交料理譚。