あらすじ
国立前期二次試験の日。
僕が受けるのは、長崎大学医学部医学科。
後期はない。他大学も受けていない。僕には、ここしかない。
中学二年の冬、父は命の危機に陥った。嵐の夜、受け入れてくれたのが長崎大学病院だった。「ここは長崎の最後の砦です」という医師の言葉とともに、父は生き延びた。
あの日から、僕の進路は決まっている。
医者になりたいのではない。長崎大学病院で働きたい。長崎を守りたい。それだけだ。
模試E判定。重い学費の現実。父の通院。
それでも「ここしかない」と思い続けて迎えた本番。
やれるだけのことはやった。
だが、自己採点は微妙。合否は、わからない。
発表前夜、掲示板に並ぶ受験番号を探す自分の姿が頭をよぎる。
もし、そこに自分の番号がなかったら?
長崎に届かなかったら?
「長崎に行けなきゃ終わる」と思ってきた僕は、その先に進めるのか。
そして迎える、掲示板での合格発表。
人をかき分け、白い紙に並ぶ黒い数字を追う。
果たして、僕の番号はあるのか。
これは、一つの受験の物語であり、
救われた命の続きをつなごうとする、静かな決意の物語。