あらすじ
「大切な人を守るには力が必要だ」
これまでに積み重ねてきたことこそが人のすべて。そのサンフィールド家の家訓を信じ、学問に励み、武術に励み、礼節に励んだ。
子どもの頃から、父上を失い当主となった頃からも、そしてあの日も。一人前の当主であるために。
今もその答えは見つかっていない。
学問の広さと深さに際限はなく、武術を極めるにも最強のさらに先に高みが続き、礼節に完璧はあっても完成などなかった。
父上に代わって若くして当主となった身として、その無力を実感しながらも、いずれはと心に誓い、無様を晒さないよう当主として振る舞ってきた。
愛すべき許嫁もいる。成人もした。けれども政務、軍務、祭事の三役の実権は成人してからも手元には戻らなかった。
力を持てない。それは大切な人を守れないことを意味する。
誰のため、誰のモノかも知らない世界。
焦る。それでも着実に。そして静かに、経験を積み重ね、時を待っていたとき、帝国の中央より転機となる一つの知らせが届いた。
『隣国、王国への救援として、当主自ら遠征軍に参加せよ』
初陣で勝利した者に与えられるナイトという称号。それを得れば何かが変えられるかもしれない。
演じる者から率いる者へ。短き物語はその遠征から始まった。