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慶応元年。京の夏は、禁門の変による焼け跡が残るなか、茹だるような熱気に包まれていた。 将軍進発の軍靴が響き、尊王攘夷の嵐が吹き荒れる「政治の季節」。 だが、その喧騒から切り離されたような路地裏の一画に、朝顔の蔓が絡まる一軒の町屋があった。 祇園囃子を遠くに聞きながら、格子窓の内で交わされる密やかな逢瀬。 忠義と欲、噂と沈黙が、やがて避けがたい破綻へと向かっていく。 幕末という時代に咲いては散った、名もなき者たちの「些末な終焉」の記録である。
慶応二年二月、冷え込む京都。 坂本龍馬捜索で静まり返る新選組屯所に現れたのは、上司殺害を口にする薄気味悪い同心だった。 隊士・大石鍬次郎は、厄介払いのつもりで非道な「方便」を投げつける。 しかし翌日、男は再び風呂敷包みを携え現れた。 言葉の綾が招いた最悪の事態。 保身に走る新選組隊士と、一線を越えた町奉行同心。 二人が暗闇の三条河原で画策する、皮肉な「天誅」の正体とは。 幕末の闇を煮詰めたブラック・コメディ。