あらすじ
王太子セヴラン殿下には、昔からひとつだけ癖がある。
緊張すると、左の親指で右手の爪の脇をこするのだ。
その小さな癖を知っているのは、王宮文書局で働くイリゼだけだった。
けれどある日、イリゼは自分の手で、殿下が別の令嬢へ誓うための婚約披露の式文を書くことになる。
家格も教養も美しさも完璧な公爵令嬢セラフィナとの婚約は、誰もが祝福する理想の縁談。
反対などできるはずもない。
それでもイリゼは、昔からずっと好きだった殿下が、式の直前になっても自分を見てしまうことに気づいてしまう。
そして迎えた婚約披露の当日。
完璧に進むはずだったその場で、「殿下が本当に見ている相手は私ではありません」と婚約者自身が破談を申し出た。
ずっと“選ばずに済む場所”へ置かれていた文書局の娘と、気持ちを隠したまま彼女をそばに置き続けた王太子。
婚約破談の騒動の中、ついに明かされる本音と、選び直される未来。
これは、婚約者のいる王太子をずっと好きだった地味な文官令嬢が、遠回りの初恋を叶えて、誰より甘く愛されるまでのお話。