あらすじ
神奈川県の私立高校。高校二年の芽依は、提出前夜に机だけ片づけて満足し、原稿は白紙のまま眠ってしまう癖がある。放課後の図書室で、返却台の本や原稿の向きを黙って直す凜太郎を見て、なぜか視線が外れない。文芸部に入った芽依は、菜稀に「入るなら今!」と背中を叩かれながら締切に追われ、凜太郎に「今日書ける一行」を一緒に決めてもらい、“明日やる”を少しずつ封印していく。駅前の喫茶店でノートを広げるたび、芽依は答案用紙の空欄みたいに、自分の気持ちの名前だけが書けない。はにかんで誤魔化す癖が、恋の邪魔になる。
文化祭の部誌づくりで、各作品に短い「帯コメント」を付けることになり、合言葉は「自分の作品に帯をつけよう」。芽依は凜太郎の短編を読み込み、好きな一文に丸を付けるだけで精一杯なのに、本人の前ではにかんで視線を落とす。凜太郎は段取りと予算を整えつつ、足りない分を自分のバイト代で穴埋めし、誰にも見せずに背負い込み、いつの間にか「助けて」が言えなくなる。連絡係の拳悟は「まあまあ」で笑って既読だけ付け、肝心の確認ほど先送りする。夏、凜太郎が作った作業表の芽依欄は空白だらけで、芽依は空欄の怖さから目を逸らす。菜稀に引きずられて商店街の文具店で原稿用紙を買い、夜、自分の予定表に小さく「今日やる」と書き足す。やがて校内で似た帯付き紹介が先に出回り「裏切者は誰?」と部室の空気が凍るが、芽依は自分の先延ばし癖も認めながら拳悟の本音を引き出し、四人は言いにくいことを言える形へ作り直す。文化祭前夜、送信ミスで印刷が止まり、凜太郎が初めて声を絞って「助けて」と言う。夜の印刷所で最後の一冊を手で綴じたあと、冬の進路面談が二人の距離を揺らす。二月末、校舎裏のベンチで告白し、「友達以上 恋人未満」を終わらせ、三月上旬の予定を日付で交わす。はにかむ帯の一言が、白紙だった答案用紙に、二人の未来を書かせていく。