あらすじ
中央アメリカの緊迫した異国で、僕はスーツを着た悪魔のような父の冷酷な支配下にいた。
唯一の救いは、無償の愛を注いでくれた異国の家族と、魂の叫びを代弁するジョン・レノンの音楽だった。
帰国後、一年遅れで編入された日本の小学校で、僕は璃子と出会う。
まるで摘みたての果実のように無垢な彼女は、僕の暗闇を照らす「虹」そのものだった。
二人は運命に導かれるように同じキャンパスで再会し、愛は確かに芽生えた。
しかし、幼少期のトラウマと自己肯定感の低さに縛られた僕は、真剣な愛に向き合う勇気を持てなかった。
璃子には「妹みたいに大事に思ってる」と、対等な愛を否定する小さな「ボタンの掛け違い」を犯してしまう。
たったその一言で、二人の絆は音を立てて崩れ去る。
「女の子の気持ちが全然分かってない」
璃子が泣きながら放ったその最後の言葉は、僕の胸に永遠の傷を刻みつけた。
そして追い打ちをかけるように、僕の精神的支柱であったジョン・レノンが凶弾に倒れる。
ラジオから流れる「Jealous Guy」は、嫉妬心とプライドに溺れて璃子を傷つけた僕自身の姿を映し出していた。
璃子は「異邦人」のように遠ざかり、僕はすべてを失った。
京都を逃れ、神戸の喧騒の中で刹那的な遊びに溺れても、璃子の「色褪せない残像」は僕の心を離れなかった。
その後、就職活動での挫折や、愛する者たちとの永遠の別れを経験しながらも、僕は「愛する楽しさ」を教えてくれた彼女たちに導かれて、人生を歩み続ける。
しかし、あれから四十年余り。
男として、父として、社会人として生きてきた「僕」の心には、あの日、璃子を傷つけた罪の記憶が、「痼(しこり)」として残り続けている。
もしあの時、あの小さな「ボタンの掛け違い」がなければ、二人は出会うこともなく、璃子を傷つけることもなかったのではないか。
これは、父との確執、初恋の喪失、そして音楽に救われた一人の男が、人生をかけて捧げる痛切な懺悔の記録である。