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婚約の前夜、王立神殿に呼び出された侯爵令嬢レイナ。 翌朝、目を覚ますと——彼女の存在は世界から「消えて」いた。 家族も友人も婚約者も、誰ひとりとして彼女を知らない。 鏡に映る自分の顔さえ、少し違って見えた。 絶望の中、彼女は唯一の手がかりを求めて王都を離れ、辺境の修道院で静かに暮らし始める。 そこで出会ったのは、かつての婚約者—— だが、彼は“彼女を知らない”青年となっていた。 それでも、レイナは信じた。 彼の笑い方も、怒り方も、指先の温度も。 「たとえ記憶を失っても、心は嘘をつけない」 運命に抗う令嬢と、記憶をなくした騎士が紡ぐ“二度目の恋”。 失われた記憶の裏に隠された禁忌の儀式と、「存在を消す魔術」の真実とは——。 愛を忘れた世界で、ただ一人を想い続ける少女の、優しくも痛切な再生の物語。
朝焼けが、崩れた街を淡く照らす。 スコープの向こうは、いつも静かだった。 血も声も、命のぬくもりも――全部、遠くにある。 時雨。コードネーム〈リリィ〉。 かつて「守りたい」と願った男を、いま狙っている。 撃てば終わる。撃たなければ、もっと終わる。 それだけの世界で、彼女はまだ引き金を離せない。 心に焼きついた師の声。 撃たれた少女の微笑み。 そして、裏切りの果てに残ったひとつの祈り。 ――白い朝に、火薬の匂いがした。 それは、彼女がまだ人間だった頃の記憶。