あらすじ
――癒しは、優しいだけじゃない。
甘味処「花月堂」は、地図に載らない。心に深い傷を負った者の前にだけ、そっと門戸を開く。
店主の神楽木花月(かぐらぎ かげつ)が供する甘味は、人の心を記憶の旅に導き、深い悲しみを救い上げる。
「どうぞこのお菓子を。あなたを待っている誰かがいますよ」
しかし深い怨みや憎しみを抱えた心には、夜の底に沈むバー「Abyss」の扉が開く。
バーテンダー・篁壮一郎(たかむら そういちろう)は、花月の古い友人。
彼の作るカクテルは「呪い」を宿し、悪へ静かに牙を剥く。
「飲めば呪いは発動する。だが怨みが正当じゃない場合、或いは嘘があったなら――呪いはたちまちあんたに返る。それでいいなら、飲みな」
ひとりは救いを与え、
ひとりは罰を下す。
どちらも人の世を離れながら、なお人に寄り添うことを選んだ者たち。
そして二人には、
千年前から絡み合う「業」があった。
光と闇、癒しと報い。
二人の人外が紡ぐ、和風ダークヒーリング夜想譚。
※第31話より、愛猫を奪われた男の慟哭と、犯人への苛烈な報いを描く『Abyss編』が始まります。
一部に凄惨な事象を示唆する表現が含まれますので、ご留意ください。