あらすじ
炎上は、偶然ではない。
――それを生業にする男がいる。
安西ケント。
匿名の指先で火をつけ、
人を有名にし、
人を社会から消してきた“炎上屋”。
依頼されるのは、
恨み、嫉妬、復讐、そして「正義」。
彼は感情を持たず、
ただ炎上の構造を設計してきた。
だがある日、
一つの依頼をきっかけに、
ケントは気づいてしまう。
かつて自分自身が、
同じ仕組みで燃やされた存在だったことを。
忘れたはずの過去。
元・天才子役として炎上し、
一夜で居場所を失った十五歳の記憶。
あの炎は、自然発生ではなかった。
調査の果てに浮かび上がるのは、
政治、メディア、世論操作。
炎上は、
権力の都合で使い捨てられる「道具」だった。
実名を晒せば、
次に燃えるのは自分自身。
それでもケントは、
匿名を捨て、真実を公開することを選ぶ。
英雄にはなれない。
正義も保証されない。
待っているのは、
沈黙と孤立だけだ。
それでも――
炎を知ってしまった者として、
彼は指を止めない。
この物語は、
炎上を操る男が、
炎上という“社会装置”と対峙するまでを描いた
現代ネット社会サスペンスである。
次に炎上を目にしたとき、
あなたの指先は、
きっと少しだけ重くなる。