あらすじ
三万の兵を率いて魔王を討伐した勇者が、凱旋門をくぐった。
だが、民衆が期待した歓声は起きない。
帰還した兵は、わずか百名。
誰一人として笑っていなかった。
祝福の行進は、葬列のような沈黙に包まれる。
息子や夫の姿を探す家族たちの叫びが響き、
勇者はただ立ち尽くすしかなかった。
王城では勝利の宴が開かれ、
王や大臣は勇者に“英雄の物語”を語らせようとする。
だが勇者の脳裏にあるのは、
倒れた仲間たちの最期と、
魔王の亡骸に泣きつく魔族の家族の姿だけだった。
生き残った兵士たちもまた、
家に帰れず、眠れず、
それぞれの場所で“生き残った罪”に押し潰されていく。
そして翌日。
王は国民を安心させるため、勇者に演説を命じた。
勇者の背後には、生き残った百名の兵士たちが並ぶ。
誰もがひどい顔をしていた。
夜も眠れず、涙も枯れ、心がどこかへ置き去りになった顔だ。
勇者は彼らに静かに告げる。
「……今日だけでいい。
国民を安心させよう。
死んでいった仲間に恥じないような顔をしよう」
勝利の凱旋は、祝福ではなく沈黙だった。
それでも彼らは、仲間のために立ち続ける。
――これは、
“生き残った者たち”の物語。