あらすじ
俺は“戦死を知らせる兵士”として村々を回っていた。
嫌々始めた役目だったが、誰かが伝えなければ家族は永遠に待ち続ける――
その重さを知ってから、俺は感情を押し殺し、黙々と扉を叩き続けた。
だが、家庭は少しずつ壊れていった。
十六になった息子は「親父みたいな生き方はしたくない」と言い残し、家を出た。
俺は止められず、探しもせず、ただ役目に逃げるように日々を過ごした。
四年後。
軍務局から届いた一通の封筒。
宛名は――妻。
震える手で開いた紙には、
息子の名と“戦死”の二文字。
息子がどこで何をしていたのか、
何を思っていたのか、
俺は何も知らなかった。
知ろうとしなかった。
そして今度は、
俺が妻に“息子の死”を伝える番だった。
何百回も他人に向けて言ってきた言葉を、
初めて自分の家族に向けて口にする。
「……苦しまなかった。一瞬だったよ」
妻が崩れ落ちる姿を見ながら、
俺は問い続ける。
――俺は、本当に正しかったのか。
役目に逃げ続けた俺は、父親だったのか。
残されたのは、
息子のいない家と、
伝える者として生きてきた男の深い後悔だけだった。