ページ:1(2件表示) / タグ一覧へ
誰にも迷惑をかけず、 誰にも心配されず、 「ちゃんとしている」まま生きてきた佐伯美咲。 赤い返却箱。 署名しない同意書。 毎夜二時十七分の“覗く手順”。 彼女は少しずつ、自分を社会から切り離していく。 そして最後に残ったのは、 扉の隙間から“向こう側”を覗き続ける役割だけだった。 救われた「私」と、救われなかった「私」。 母に抱きしめられた側と、暗闇に残された側。 これは、誰にも殺されず、 誰にも責められず、 自分で自分を消していく物語。 ――最初から、そうだった。
港がある。船はいない。水面が揺れている。番号札が落ちている。 数字だけがある。拾われる。置かれる。元の位置に戻る。同じ順で数えられる。 音が鳴る。船は現れない。札が一枚残る。数字は読めない。 裏も表も同じ。境界線が見える。札が消える。数え始める動きが続く。