あらすじ
十年前、豪雨の埠頭で共に死を誓い、そして生き残ってしまった二人がいた。政敵同士の子息であり、誰よりも愛し合い、誰よりも深く傷つけ合った九条和真と西園寺の令嬢。
十年の歳月を経て、一方は冷徹な実業家として、一方は没落した家系を背負う影として再会する。条件は、家門を揺るがすスキャンダルの隠蔽。
明日正午には他家との婚姻届を提出し、社会的に「死ぬ」ことが決まっている彼女に、九条は最後の一晩を要求する。琥珀色の酒、静謐なラウンジ、そして肌を焼くかつての体温。
これは、心中し損ねた二人が、別々の場所で正しく互いを殺し終えるための、最後にして最悪の「沈黙の告白」の記録である。