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雨が降っていた。 東京の路地の奥、古びたビルの裏側を濡らす、冷たくて意地悪な雨だ。 佐伯 結(さえき ゆう)は、フードを深く被り、アスファルトの隅を歩いていた。 視界に入るのは、薄汚れたコンクリートと、水たまりにぼやけて映るネオンの残骸だけ。 それらは、結の心の底に澱んだ、どす黒い虚無感をそのまま映し出しているように見えた。 三日前、結は勤めていた有名フレンチレストランを辞めた。