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目を覚ますと、俺は一両だけの電車に乗っていた。 窓の外に広がるのは、どこまでも続く水平線だけ――海の上を走る電車。 行き先も、目的もわからない。 けれど不思議と心は穏やかだった。 やがて電車は、水面に浮かぶ小さな駅に停まる。 そこで出会ったのは、白いワンピースを着た幼い少女。 彼女との出会いが、この“夢の旅”の始まりだった。
消費するほど金が増え、創作するほど金が減る——統合管理知性体《ユニヴ》が築いた完璧な世界。 椎名歩は模範的な消費者だった。推奨される映画を観て、生成された小説を読み、何もしないまま裕福に暮らしていた。 ある日、人間が書いた小説を読んだ。下手だった。構成は破綻していたし、誤字も多かった。なのに三日経っても、たった一行が頭から離れなかった。 彼は創作者に金を送り始めた。新作を待ち焦がれた。一人が筆を折るのを見届けた。 そして彼は書き始めた——小説ではなく、感想を。 「この作品は、いい」 たったそれだけの言葉が、この世界では国家転覆にあたる。 マイナス三兆円の負債を背負った読書家が選んだ犯罪は、「好き」と言い続けることだった。